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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)430号 判決

上告人 株式会社金木商店

被上告人 国

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人真野毅、向伊達利知、同溝呂木商太郎、同伊達昭、同沢田三知夫の上告理由第一点および第二点について。

本件自転車部品の払下げおよびその完成品の販売について原審のした事実認定は、その挙示の証拠関係に照らして、首肯するに足り、右認定事実に照らせば、本件自転車部品は、上告人が自己の計算負担において鉱工品貿易公団から払下げを受けこれを農林省関係の団体に販売したのであつて、右販売は国の事務としてなされたものでなく、農林省が払下申請の手続をしまた販売について規制をしたのは、行政上の監督あるいは事実上の規制としてのものにすぎなかつた旨および上告人と農林省との間は統制経済下において後者が前者の経済活動を援助指導した関係にあつたものであつて、農林省がその事務の遂行を上告人に委任した関係にはなかりた旨の原審の判断も、また是認しうるところである。論旨は、原審の認定しないか、もしくは原審の認定にそわない事実を主張して、原審の適法にした事実認定判断を非難するに帰するものであつて、原判決には所論の違法を認めえないから、論旨は採用するに足りない。

上告代理人真野毅、同伊達利知の上告理由第三点について。

上告人と農林省との間に所論のような事務代行委託の法律関係が存在しなかつた旨の原審の認定判断が首肯するに足りることは、上告人真野毅、同伊達利知、同溝呂木商太郎、同伊達昭、同沢田三知夫の上告理由第一点および第二点に対する判断に説示したとおりである。本件自転車部品の上告人に対する払下げが所論統制法規に反していたかどうかは、原審の前記認定判断とはなんらかかわりのない事項である。また、本件は、鉱工品貿易公団が第三者として農林省に対し代理権付与を表示した本人としての義務の履行を求める事案ではないから、民法一〇九条あるいは一〇〇条但書の適用を云為する論旨は、理由のないことが明らかである。したがつて、論旨は採用しえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 長部謹吾 入江俊郎 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)

上告代理人の上告理由〈省略〉

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